世界で
最も詳しい
アグー事典
アグー豚についてかなり詳しく調べてみました。
興味のあるところからお読みいただけたら光栄です。
アグー豚の歴史
「アグー豚」とは、14世紀末(室町時代)に琉球王の使者が明(中国)から持ち帰り、王族や貴族に献上していた黒豚のことです。後に琉球在来種の島豚として定着して食文化となり、戦前には10万頭も生育されていたといいます。
しかし、戦争の影響で国内の家畜が激減したことによって、発育の早い大型の外来種が大量に流通し始め交雑化が進みました。掛け合わせによって繁殖や成長が早まったことで生産コストが下がり、豚肉は質より量の時代となっていきました。
「アグー豚」は生産性では外来種に勝てません。なぜなら、一度の出産頭数が外来種の半分以下で平均4~5頭。成豚に成長しても体重は外来種の半分以下の100kg程度です。肥育が難しい上に発育が遅いため出荷までに2倍以上の約300日を要するなど、農家としての採算性も厳しいです。
このように雑種化や市場原理によって「アグー豚」は絶滅が危惧されました。
そこで、「アグー豚」純血種の保存に声を上げる人たちが出てきました。名護博物館の島袋館長たちです。1981年、県立北部農林高校の太田教諭と協力して、当時現存していた残りわずか30頭のうち18頭を高校に集め、10年の歳月をかけて子孫8代に渡る「戻し交配」を実施。これにより戦前の原種に近い「アグー豚」が復活し、絶滅から免れることができたのです。
※ 以上、ウィキペディア等を参考にまとめました
「アグー」とは…
「アグー」は商標ではなく琉球在来の黒豚(品種)を指します。
たとえば、沖縄県庁畜産課内の「アグーブランド豚推進協議会」では、10項目の基準を満たした農場に対して「アグーブランド豚指定生産農場認定書」を発行しています。認定農場の実態を見ますと、在来種アグー同士の掛け合わせ(純血)はごく稀で、大半は西洋豚との「混血」のようです。
ちなみに、日本国内の在来種豚はほぼ絶滅したと言われますが、「かごしま黒豚」は、たゆまぬ努力と研究があって存続しています。
これは元々、江戸時代に島津藩によって琉球から運ばれた「アグー」を、後にイギリス原産のバークシャー種と交雑させたものです。
現存する全国津々浦々の黒豚のルーツは「琉球在来種のアグー」にたどり着くと言えます。
「ブランド豚」の比較
管理団体 | 血統 | 年間出荷数 | 肥育期間 | |
---|---|---|---|---|
満天アグー黒○® | 農業生産法人 正直村ファーム株式会社 | アグー血統100% 父:アグー種 母:アグー種 | 120頭 | 20ヶ月 |
アグー豚 | 沖縄県アグーブランド豚 推進協議会 | アグー血統50%~ 父:アグー種 母:アグー種・ランドレース種・大ヨークシャー種・デュロック種 | 3万頭 | 8ヶ月 |
あぐー豚® | JAおきなわ 銘柄豚推進協議会 | アグー血統50% 父:アグー種 母:ランドレース種と大ヨークシャー種の交雑 | 3万5千頭 | 8ヶ月 |
かごしま黒豚® | 鹿児島県黒豚 生産者協議会 | アグー血統50% 父:アグー種 母:バークシャー種 | 30万頭 | 8ヶ月 |
国産豚 (三元豚など) | 一般社団法人 日本養豚協会 | 父:デュロック種 母:ランドレース種&大ヨークシャー種の交雑など | 1500万頭 | 6ヶ月 |
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国内で養豚されている「西洋豚」
国内に流通する豚肉は主に以下の5種を交雑させたもので「三元豚(さんげんとん)」と呼ばれるものが多いです。三元豚とはブランド名ではなく3種類の品種を交雑させた豚のことで、最も代表的なのは市場の70~80%を占める「LWD」です。
これは「ランドレース種(L)と大ヨークシャー種(W)との交雑で生まれた雌(LW)」に対して「デュロック(D)の雄」を掛け合わせたものです。
名称 | 原産国 | 特徴 | 交雑された血統 |
---|---|---|---|
ランドレース | デンマーク | ・大型 約300kg ・白色 ・発育が早い ・出産頭数が多い ・赤身が多く加工品にも適する | ・デンマークの在来種 ・大ヨークシャー種 |
大ヨークシャー | イギリス ヨークシャー州 | ・大型 約350kg ・白色 ・発育が早い ・出産頭数が多い ・赤身が多く加工品にも適する | ・イギリス在来豚 ・中国種 ・ネアポリタン種 ・レスター種 |
デュロック | アメリカ | ・大型 約340kg ・褐色 ・肉質が良い ・霜降りが多い ・獣臭が強い | ・ジャージーレッド種 ・ニューヨークレッド種 ・赤色バークシャー種 |
ハンプシャー | アメリカ | ・中型 約270kg ・黒色で肩から前足まで白帯 ・脂肪が少ない | ・イギリス在来豚を アメリカが輸入して改良 |
バークシャー | イギリス バークシャー州 | ・中型 約220kg ・黒色(黒豚) ・眉間、四肢端、尾端が白い ・肉質が良い | ・イギリス在来豚 ・タイ種 ・イタリア種 ・中国種 |
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「アグーブランド豚」対「三元豚」肉質比較
以下は「沖縄県農林水産部畜産研究センター様」公式サイト内の比較レポートから、特に気になった3つを抜粋しました。
比較①
水分含量・脂肪含量・脂肪融点・脂肪酸組成については、2013年8月~2014年6月まで当所で肥育した平均222日齢のアグー36頭を、伸展率・加圧保水性・圧搾肉汁率・加熱損失・破断応力については前述したアグーのうち23頭と、2014年9月に食肉卸業者から購入したLWD(交雑種)12頭分を用いた。それらの10~13胸椎部から胸最長筋と皮下内層脂肪を採取し、肉質分析を行うまでマイナス30℃で冷凍保存した。
沖縄県畜産研究センターより引用
補足:LWDとは? 前項の「西洋豚」の解説でもご紹介しましたが「ランドレース種(L)と大ヨークシャー種(W)との交雑で生まれた雌(LW)」に対して「デュロック(D)の雄」を掛け合わせたものです。
結論①
上記の調査結果から「アグーブランド豚」には次の特徴があるといえます。
調査結果 | 特徴 |
---|---|
筋肉内脂肪含量(霜降りの度合い)が高い | サシが多く入っている |
伸展率(弾力性の度合い)が高い | 弾力に富んでいる |
加圧保水性(水分保持の度合い)が高い | しっとりしている |
圧搾肉汁率(肉汁含有の度合い)が高い | 肉汁が豊富 |
加熱損失率(肉汁排出・縮みの度合い)が低い | 調理後も旨みが残る |
破断応力(柔らかさの度合い)が低い | やわらかい |
比較②
肥育したアグー4頭の豚肉および食肉卸業者から購入した一般豚3頭の豚肉を用いた。当センターで肥育したアグーは、同一飼料を給与し平均体重110kg前後でと畜した。それらの10~13胸椎部から胸最長筋と皮下内層脂肪を採取し、肉質分析および官能評価を行うまでマイナス30℃で冷凍保存した。 アグーは一般豚よりも脂肪融点やパルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸およびα-リノレン酸の割合が低かった。また、アグーは一般豚よりもパルミトレイン酸やオレイン酸といった一価不飽和脂肪酸の割合が高かった。
沖縄県畜産研究センターより引用
結論②
上記の調査結果から「アグーブランド豚」に含まれる脂は「不飽和脂肪酸」が過半数を占めておりヘルシーな肉といえます。
ちなみに
不飽和脂肪酸についての豆知識
アブラには常温で固まる「脂」と、常温で液体の「油」があります。「脂」の主な成分は「飽和脂肪酸」と呼ばれるもので、肉やバター、ラードなど動物性の脂に多く含まれます。一方、植物や魚の「油」に多く含まれるのが「不飽和脂肪酸」と呼ばれます。「飽和脂肪酸」は摂り過ぎると血液中に悪玉コレステロールを滞らせ、動脈硬化の原因となる脂肪酸です。
NHK健康チャンネルで確かな医療・健康情報を より引用
比較③
アグーブランド豚とLWDを各10頭ずつ合計20頭用いた。これらは県内食肉卸業者から購入したもので、と畜の翌日にロース部位を採取し真空パック後4℃で4日間熟成させた。開封後は最後肋骨から腰椎部を切り出し、各分析に供するまでマイナス80℃で冷凍保存した。
沖縄県畜産研究センターより引用
結論③
上記の調査結果から「アグーブランド豚」の方が遊離アミノ酸を豊富に含んでおり、より旨みや甘みを感じさせることがわかります。また、栄養価が高く、より健康増進に繋がる食品といえます。
ちなみに
各成分の主な働き
旨味・酸味の成分 | |
アスパラギン酸 | 疲労回復、美肌 |
グルタミン酸 | うまみ成分、脳を活性、高血圧対策 |
甘みの成分 | |
スレオニン | 脂肪肝予防、美肌(必須アミノ酸) |
セリン | 美肌、美白、認知症予防 |
グリシン | 不眠改善、美肌、抗うつ |
アラニン | 肝機能改善、美肌 |
プロリン | 関節痛改善、美肌、脂肪燃焼 |
風味・苦味の成分 | |
ヒスチジン | 関節炎緩和、ダイエット(必須アミノ酸) |
バリン | 筋肉修復、肝機能改善、美肌(必須アミノ酸) |
メチオニン | 肝機能改善、アレルギー緩和、うつ改善(必須アミノ酸) |
トリプトファン | 老化予防、不眠解消(必須アミノ酸) |
フェニルアラニン | 記憶力向上、鎮痛効果(必須アミノ酸) |
イソロイシン | 筋肉修復、疲労回復、糖尿病予防(必須アミノ酸) |
ロイシン | 筋肉強化、肝機能向上、ストレス緩和(必須アミノ酸) |
リジン | 疲労回復、肝機能向上、脳卒中予防、ヘルペス改善(必須アミノ酸) |
アルギニン | 筋肉増強、免疫力向上、美肌 |
チロシン | うつ改善、ストレス緩和 |
システイン | 抗酸化、美白 |